中世ではキリスト教の教会の支配が強く、真なる世界は神の領域のものであり 、それを中心に考えられていたのが中世です。神の世界を分かり易い図にして様式化し表現したのが中世の絵画です。現実の世界をそのまま写実的に描くという写実的表現は中世では封印されていました。 しかし、13世紀にはヨーロッパが十字軍の戦いに敗れ、教会は弱体化、支配力が無くなり教会から世俗への支配力の移行することで代わって台頭して来るのが貿易で潤ったメディチ家などイタリアの商人達です。 この世俗への支配力の移行が、やがて神の視点からではなく再び人間の視点から世界を見ることへ回復ルネサンスの時代へ、写実的表現が復活しました。ルネサンスの美術が人間性の回復と言われる所以です。中世ではキリスト教の支配によってその技術が封印され平面な宗教絵画が主流となりますが、これは教会の介入を認めないわけにはいかないでしょう。絵画の表現、つまり美術の表現の良し悪しは写実がよくて、平面なのが悪いというようなことではなく一つの技術であって対象を正確に写しとるというのには、それなりに技術が必要です。中世はその技術が廃れてしまったのか技術はあるが1000年ものあいだ流行っていなかった故に制作できなかったということなのではないでしょうか、中世の彫刻も絵画と同様に写実的ではなくデフォルメされたかわいらしいものがほとんどです。絵画における写実表現で最も重要なのは、描く人の視点なんです。 視点が固定されてはじめて透視図法が生まれるわけで奥行きや影の表現も可能になります。 視点が固定されたのがルネサンス以降です。また絵画と違って彫刻には固定した視点はありません。そのものを模倣・再生産するだけで 古代から写実的な表現がありました。 これは日本でも同様で 絵画においても緻密でリアルな程 高度だと思う美術愛好家は多く絵を描く初心者に至っては写実な表現を追いかけがちです。これは 素人ウケはしても芸術家には見向きもされません。個性がないというものです。古代ギリシャでは美しい肉体をやや誇張して彫刻にするという美意識が花開きましたが これが古代ローマに受け継がれてやがてルネサンス期においては優れた絵画、彫刻、建築が生まれて見事な芸術が開花しました。 専門の職人を育てて定期的に仕事をさせるためにはそれを支えるスポンサーなり依頼人が必要。貿易で潤ったメディチ家などイタリアの商人達は 豊富な資金力で彼ら芸術家を支え優遇しました。 でも中世ヨーロッパにはその余裕がありませんでした。中世ヨーロッパの宗教絵画だの壁画だのってあんまり上手くないですね。 あれは実は専門の職人ではなく、教会の修道士たちが描いてます。描いている題材がキリスト教に関する宗教画なので聖書を読める聖職者(絵の素人)が描く方が題材と目的としては正しかったのです。ヨーロッパが経済的に発達していくと金銭的に余裕も出て 教会建築も寄進やら寄付やらで金ができ職人に給料払って絵の上手い人に描いてもらいたいとの考えるようになる。 、そこで弟子を取って仕事を分担 より効率的な作業で生産性が上がり技術もどんどんが広く伝わっていく。 職人同士も腕を競うようになる。同時に貨幣文化が広まると庶民も自分の肖像を描いてもらうようになる。 というのがルネッサンス期です。肖像画だけ描いてても画家は生活できるんですから専門職として成り立ちます。より上手い画家は金持ちや王侯貴族からもオファーが来るし本物そっくりの肖像画を描けば良かった時代です。しかし写真が誕生すると途端にそういうのは需要が減ってしまうわけです。。また上手い人なら誰が描いても一緒ってことで個性がありません。じゃどうするのか「自分にしか描けない絵とは」という方向により個性的な絵を求められる様になりここから近代絵画のキュービズムや印象派など個性追及の時代になっていくのです。
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